1972 赤の貴婦人は七度人を殺す(イタリア)

La dama rossa uccide sette volte (+WG, Monaco)

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監督 エミリオ・ミラリア
製作 エリオ・ディ・ピエトロ
脚本 ファビオ・ピトール
   エミリオ・ミラリア
撮影 アルベルト・スパニョーリ
音楽 ブルーノ・ニコライ
美術 ロレンツォ・バラディ

配役
 バルバラ・ブーシェ(キティー)
 ウーゴ・パリアイ(マルティン)
 マリナ・マルファッティ(フランツィスカ)
 マリノ・マッセ(警部)
 シビル・ダニング(ルル)
 ピア・ジャンカッロ(ローズマリー)
 ニノ・コルダ(ヘルベルト)
 ファブリツィオ・モレスコ(ペーター)
 ルドルフ・シュンドラー(トビアス祖父)

製作会社 フェニックス・シネマトグラフィカ

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 ヴィルデンブルック家のキティーとエヴリン姉妹は喧嘩ばかりしている。広間にかけられた絵画の前で突然狂暴になったエヴリンを見た祖父のトビアスは、その絵にまつわる呪いの話を二人にする。数世紀前、黒の貴婦人と赤の貴婦人と呼ばれる先祖がいた。二人は憎しみあっており、ある夜黒の貴婦人は赤の貴婦人を七回刺して殺してしまう。赤の貴婦人は復讐のためによみがえり、六回人を殺したあと七人目に黒の貴婦人を殺した。それ以来、百年ごとに同様の出来事が繰り返されてきたのだ。そして次の百年目が近付いていた。

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黒髪のほうがエヴリン。

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黒髪のほうが赤の貴婦人。

 成人したキティーはファッションブランドでカメラマンとして働き、マネージャーのマルティンと付き合っている。マルティンに気があるモデルのルルや、アシスタントマネージャーのローズマリーは、公私に順調なキティーを妬ましく思っている。心臓の悪いトビアスの面倒は、長姉のフランツィスカとその夫のヘルベルトがみていた。ある晩トビアスの寝室に、短剣を持ち赤いケープをまとった女が現れる。トビアスは発作を起こして死に、女はしわがれた笑い声を挙げながら走り去った。

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 マルティンの上司のハンスが、赤いケープの女に短剣でめった突きされて死ぬ。女の顔がエヴリンに似ていると指摘されるが、キティーは激しく否定する。数年前、キティーは居城の堀端でエヴリンと取っ組み合い、誤って死なせてしまったのだ。フランツィスカとヘルベルトが死体を始末し、エヴリンはアメリカに移住したことにしていた。ところがキティーの留守電にエヴリンの伝言があり、自分は復讐のためによみがえったと告げる。キティーとフランツィスカは城の地下に確かめに行くが、エヴリンの死体はそこにあった。

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 何かに気付いてキティーに教えようとした衣装係のレイノーラが赤いケープの女に殺される。精神疾患で入院しているマルティンの妻エリザベスが、エヴリンを名乗る女に病院からの脱走を持ち掛けられ、裏切られて殺される。エヴリンの元ボーイフレンドで、キティーを強請っていたペーターが、ローズマリーに疑惑を持ちキティーに話そうとするが、赤いケープを着たエヴリンに殺される。キティーを自宅で保護していたマルテインは、ルルが身に着けているペンダントが、子供の頃のエヴリンの持ち物だったことに気づく。

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柵を乗り越えようとしたときロープを切られ、槍状の忍び返しに喉を貫かれる。

14.png車で引きずられ、縁石にどーん。

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 ルルがエヴリンの表札がかかったアパートを訪れ、待ち構えていた女に撃ち殺される。部屋には赤いケープと変装用のかつらや仮面があった。現場におびき寄せられたキティーは死体を見て逃げ出すが、同じくおびき寄せられていたヘルベルトが警察に捕まる。マルティンは弁護士事務所に忍び込んで、遺言書に付帯されたトビアスの手紙を読み、ローズマリーがキティーの姉妹だったことを知る。トビアスは呪いを断ち切るため、凶暴な性格のローズマリーと農家の娘を取り換えたのだ。

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 城の地下にエヴリンの死体を確かめに来たキティーは、短剣で背中を刺された赤いケープのローズマリーを発見する。フランツィスカと共謀して、ローズマリーは一連の殺人を犯し、最後に裏切られたのだ。堀から引き揚げたときには生きていたエヴリンを本当に殺したのもフランツィスカだった。キティーは地下に閉じ込められ、水門から引いた水で溺れさせられそうになる。だが、フランツィスカはマルティンに捕まり、妻の裏切りに怒ったヘルベルトに射殺される。キティーは間一髪で救い出された。

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 『エヴリンが墓から出てきた夜』であたりを取った、エミリオ・ミラリア監督が続いて撮りあげた作品。途中で方針転換したかのような前作に比べて、ゴシック・ジャーロという評価を最初から意識して作られている。とはいえ、なにせジャーロなので、つじつまの合わないことが多い。ヴィルデンブルック家の全員を憎んでいてよいはずのローズマリーが、なぜフランツィスカの言いなりになっているのか。ルルを共犯に引き入れるメリットは何なのか。真相を知るヘルベルトを警察に逮捕させるのは墓穴を掘るだけではないのか。

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 論理性に乏しいのは「ジャーロだから」と諦めるとしても、作品全体のコンセプトにかかわる重大な問題がある。上のポスターを見ると分かりやすいが、ローズマリー以前に六人が殺されていて、キティーが殺されると八番目ということになってしまうのだ。最初観たときは人数をちゃんと数えておらず、「キティーは助かったが、フランツィスカが七番目に死んで、呪いが完結したわけか。よくできているな」と感心したのだが、思い違いであることが後で分かってがっかりした。イタリア人って奴は。

27.png死に際にマルティンを刺すフランツィスカ。悪女の鑑だな。

 養子のエヴリンが殺されて、本来エヴリンとして育てられるはずだったローズマリーが復讐するかのように連続殺人を行っていくというのは、赤の貴婦人の甦りの解釈としてよくできている。フランツィスカがエヴリン殺しの真犯人だから、最後に死ぬのが彼女だというのも呪いの伝説と重なり合う。ローズマリーとフランツィスカが相討ちの形で死ぬなら、赤の貴婦人が七人を殺したという解釈ができる*が、そうなっていないんだよなあ。画竜点睛を欠くというか、詰めの甘さが残念な作品である。

*ルルを撃ったのはフランツィスカだという気もするのだが、よく分からない。

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 色々ケチはつけたが、前作同様に美的な側面から見て、目を楽しませてくれる作品ではある。特に、キティーの夢の中で、ガラス張りの広いホールのような場所を、赤の貴婦人が走ってくるシーンは印象的である。静止画に切り取ってしまうと、いま一つその良さが伝わらないかもしれないが。ブルーノ・ニコライのスコアも素晴らしい。メインテーマは、恐怖映画史に残る名曲だと思う。映画を見終わった後も、ながくその旋律が頭に残る。

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 ドイツが舞台という設定だが、登場人物のファーストネームは英米っぽいし、服装や室内装飾のセンスはイタリア的である。フォルクスワーゲンがたくさん出てくるのが、ドイツらしいと言えばドイツらしいだろうか。ローズマリーの愛車も、黒の貴婦人が犯行時に使っているのも、白色のフォルクスワーゲンである。あからさまなヒントなのだが、ローズマリーがキティーたちの姉妹であることが分かるのは終盤なので、犯人を推測する手掛かりにはなっていない。

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 『エヴリンが墓から出てきた夜』と本作は、特にアメリカで大きな成功を収めたようだ。普通なら余勢をかって次々と新作を作りそうなものだが、監督のエミリオ・ミラリアはこれ以後一本も映画を撮っていない。キャリアから推測すると、この頃50歳前後だったはずで、引退するような年齢ではない。亡くなったのか、情熱を失ったのか、気になるところである。アメリカでは、赤の貴婦人のフィギアがついた二作のボックスセットが発売されている。フィギアはともかく、日本でも3000円くらいなら、二枚組DVDを出しても売れるのではないだろうか。

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33.pngマリナ・マルファッティの見事な悪女顔。この人がただの優しいお姉さんだなんて誰も信じない。


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